2012年8月15日 (水)  報われた忍耐 3

「幾ら今年のアルプスが寒い夏だとはいえ、8月のど真ん中に雪かきの話をするのは、どうなのだろう」などと思ったりもしたのですが、やはり、続きものの日記が途中で立ち消えになったままでは、次の話も書き難い。

と、いうことで……


            〜前回からの続き〜

さて、ぴかぴかの気障でいられた世代の男性が颯爽と現われ、我が家の駐車場を一気に片付けていってくれた日から、暫く経った頃です。

ぁ、ちなみにその男性ですが、あの日は誰かの代りか何かで除雪をしていたのでしょうか、残念ながら、その後は一度も姿を見かけませんでした。
ですから私は、いまだに彼がどこの誰なのか、知らずにいます。

その日は久しぶりの快晴で、それまで隅に積み上げて置いた大量の雪を整理するには、丁度良い天候でした。

というのも、そこは家自体の正面玄関から公道へと続く私道、つまり下の階に住むお婆ちゃんの敷地なのですが、私はいつも、人間1人がゆったりと通れる程度の雪かきをしていましたから、そのかいた雪が、毎回端に順番に積み上げられていました。

その上、除雪車が押しやって行った分が、そこに乱雑に加わり、連日大量の雪が降っている状態でどんどん場所がなくなり、私はそろそろ自分の背より高い場所へ、雪を放り投げなければいけなくなっていたのです。

ですからこの日、私はその雪をもっと綺麗に積み上げ直して、手前に次回用の空間を作っておこうと思ったのです。

で、久しぶりにTシャツ一枚で汗をかきながら、水分を含んで重くなっているか、凍り付いて板の様になった雪を、せっせと積み上げ直していると、大きな声が私の背中に話しかけました。

「みんつ、その雪、退かしてやろうか?!」
振り向くとそこには、ショベル・カーに乗った酪農家W氏が、微笑んでいました。

私の知る限りW氏の雪かき分担は、村のある公共施設周辺だけの筈ですし、そこはW氏の家のすぐ隣ですから、そこの雪かきついでに私の分も、というわけでないのは明らかです。

ということは、自分の雪かきが終ってから私の所に来てくれたのか、もしくは、これから何処かに行く前に、私の雪を運んでくれようとしているのか、どちらにしても、W氏にとってそれは、余分な仕事に違いありません。

「うん! ありがとう!!」
元気良く答えた私に、W氏は笑顔のままショベル・カーを操り、あっという間に雪を持って行ってくれました。
私一人でしたら、何時間か掛かったであろう仕事が、がっと一掬いで終りです。

「すごく助かったよ、ありがと〜」
片手を上げて去っていくW氏に、私はもう一度お礼を言いました。
……ふふふ、やっぱりこういう親切は、嬉しいですよね。

その後私は、竹箒で残った水っぽい雪を綺麗に掃き、予定よりもずっと早く、ずっと大きな空間を確保することが出来ました。

こうして私の雪かきは、まぁ、終わり良ければ全て良し、という具合に収まりました。

                  〜完〜


続きものなのに長い間さぼりっぱなしの日記で、大変申し訳ありませんでしたが、もし最後まで読んで下さった方がいましたら、ありがとうございます。

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