2009年10月5日 (月)
とうもろこしの謎 1
ある日の午後、夕飯用の野菜を採りに畑へ行った私は、おかしな光景に出くわしました。
私の畑には借りた当初から柵があり、中に入るには扉を引かなければいけないのですが、この扉は、切り出しただけの板で出来ている上、長年の雨や雪で立て付けが悪くなっている為、力を入れて引っ張らないと開きません。
多分これは、近所の犬や子供等が気安く入り込んで、悪戯をしたりしないようにということだと思うのですが、柵は丸太をざっくりと渡してあるだけなので、中に入ろうと思えば、隙間から誰でも簡単に入れます。
つまり、偶然やって来た人や飼い犬、家畜等が「ぁ、柵があるから入っちゃいけないんだ」と感じて引き返す程度のもので、野菜を食べにやって来る小型の野生動物等を追い返す力は、全くありません。
ただ、今まで畑が荒らされた事は一度もありませんので、私は、それについて特に気にしたことはなかったのですが……
この日、畑の外、扉の前で立ち止まった私が見たものは、芝の上に横たわっている1本のとうもろこしでした。 それは、誰かがとうもろこしを根ごと引き抜き、実の部分だけを取り除いて、そこに捨てて行ったとでもいう感じです。
すぐ側には、生ゴミや抜いた雑草等を捨てる厩肥置き場がありますので、私が最初に考えたのは、「厩肥置き場に捨てるつもりが、横にそれてしまったのだろう」でした。 でも、あちこちに厩肥置き場のあるこの田舎で、一体誰が何の為に、自分の畑のとうもろこしをわざわざ私の畑まで持って来て、捨てて行ったのでしょうか?
そして私は、あることに気付きました。 そう、私の住む村では標高が高すぎる為、畑にとうもろこしを植える人は殆どいないのです。 毎年とうもろこしを植える私に、村の人達はこう言います。 「ここの標高じゃ、実は付かないよ」
……まさか! 私のとうもろこしは、柵のすぐ後ろに生えていますから、誰かが抜こうと思ったら、柵からちょっと手を伸ばすだけで良いのです。 扉にしても鍵はありませんから、その気なら、畑には誰でも入れますし。
……あぁ、やっぱり。 一列に並んだとうもろこしの一番外側が一本、何者かによって抜かれています。 ただ、この1本は先日試しに食べたものでしたので、実は既にありませんでした。 引っこ抜いてはみたものの、実が付いていないので、その場に捨てたのでしょうか?
でも、誰が何のために? とうもろこしは何本も生えていますから、1本目が駄目でも次を抜けば良いだけですが、他のものは何ともありません。 単なるいたずらでしょうか?
否、そもそもこれは人間の仕業でしょうか? それとも動物の? とうもろこしを盗みに来た狐か何かが、畑の外まで引きずって、置き去りにしたとか? もしくは、私が実を取った後のとうもろこしが、自然に倒れたとか? でも、そうだとしたら、柵の外まで運んだのは何者でしょう?
とうもろこしをきちんと厩肥置場に捨てた私は、首を傾げながらも答えが分らぬまま、いつの間にかこの出来事を忘れていました。
〜次回に続く〜 |
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