2007年12月5日 (水)
掛け布団の法則
理由は知りませんが、我が夫B氏にとって、「夫婦が一つのベッドで一緒に寝る」という事は、重要な事です。 旅先のホテルでも、値段等の交渉をする私の横で、B氏がする質問はいつも「ベッドはダブルか?」ですから、これはかなり重要なのでしょう。
B氏が言う「一つのベッド」とは、マットレスも掛け布団も一つという意味で、ツイン・ベッドをくっ付けて一つにしたもの、一つのベッドだけどマットレスや掛け布団は各自別々という様なものは、認められません。 また、寒くて毛布等が必要な場合、やはりその毛布も一つでなければいけません。
しかし、スイスで一般的なのは、私の知る限り、ツインをくっ付けるという形です。
少し考えれば分りますが、身長も体重も全く違う男女が、同じ硬さのマットレスで寝るというのは、快適な睡眠を考えた場合、どちらかが犠牲になるわけですからね。 実際、私達夫婦がマットレスを買った時も、店員は当然の様に、私には私の、B氏にはB氏の身体に合わせて、商品を薦めていましたし。
ところが、普段殆ど自己主張しないB氏が、この時ばかりはこう言張りました。 「2人一緒でないなら、買わない!」
で、我が家はどうなったかといいますと……
マットレスは特別注文の2x2,5m、掛け布団と毛布は、既製品最大サイズの2,4x2,4m――カバー類の値段が、高くて困ります――です。 ベッドに至っては、「その大きさになると、作る事は出来るけれど、保証書は上げられない」と言われ、マットレスに合わせて、B氏が自分で作りました。
さて、そんなベッドで私達は、案外快適に過ごしているわけですが――昼間はこの大きなベッドを、猫のM氏が独り占めです――私は、ほんのたまにですが、「別々のベッドも良いかも知れない」と思う時があります。
それは例えば、 B氏が無理矢理突っ込んだ腕枕で、首の血管が圧されていたのか、深夜に頭の半分が痺れて目覚めた時とか、スキーの夢でも見ているのか、B氏の寝返りが激し過ぎ、私の掛け布団が少しだけになった時とか、B氏が大量にかく寝汗で、私の寝ている部分まで湿った時とか……
「一つのベッド」が嫌なわけではないのですが、「こんな時、別々のベッドなら起こされないよなぁ」と思ったりもするのです。
さて、先日、2人でテレビを見ていた時の事です。
先程、我が家には大きな毛布があると書きましたが、これは現在、居間のソファーに置いてあります。 何故かというと、真下の部屋が1階2階共全く使われていない為、居間にいると足下が寒い、そして、B氏の体温が高い為、ベッドでは毛布が必要ないと分った、からです。 はい、簡単な話、2人分の膝掛けとして使っているのです。
ところが、この日は寒かったので、B氏は、膝掛け様毛布に首まですっぽりくるまって、テレビを見ていました。 で、番組に夢中になっている内に、毛布をどんどんたぐり寄せ、私の足下には毛布がない、という状態になりました。
「ちょっとぉ、B氏、私の毛布を取らないでよ」 「ははははは、取ってないさ。まだそこに、十分あるじゃないか」 「あのね、この毛布は四角いの。ということは、単純に計算しても、一人二角使って良いって事よね。B氏は、三角も使ってるじゃん」
「角が幾つかなんていうのはな、重要じゃないんだ。余ってる所は一杯ある。そこを使うんだよ」 「そういう使い方だと、毛布がくしゃくしゃってなって、気持ち悪いじゃん。ベッドでもいつもそうだし……もう、いっそ掛け布団類は、各自1枚にしようか? そうしたら、お互い好きな様に使えるしさ」
するとB氏は、急に私の方に向き直り、真剣な顔で言いました。
「みんつ、良く聞くんだ。掛け布団を別々にしたら、次はマットレスが別々になる。マットレスが別になったら、次はベッドが別になり、いつの間にか寝室自体が別になる。寝室が別になったら、後は離婚だ。どうせ離婚になるなら、そんなに長くて面倒なプロセスを踏むのは、時間の無駄だ。分るか? 掛け布団を別にするなら、そんな手間は省いて、さっさと離婚をした方が良いんだよ。みんつは、離婚したいのか?」
……ええと、私はただ、四角い毛布を四角く使いたいだけです。 |
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