2008年12月3日 (水)  つぶやき

朝起きて、コーヒーも飲まずに雪かきをし、その合間に、下のお婆ちゃんからお茶の休憩とお昼に誘われ、部屋に戻るともう3時。

今から薪を焚き、シャワーを浴びたら、すぐ夕方。
その後、夕飯の支度をしてビールを開けたら、あっという間に夜だな、きっと。

……私の1日って、滅茶滅茶シンプル。

2008年12月4日 (木)  つぶやき 2

昨日雪かきをしていたら、煙突掃除のおじさんが来ました。
「明日午前10時、お宅の煙突を掃除しに来ます」

10時なら多分大丈夫だとは思いましたが、朝の弱い&目覚し時計のない私は、念のため、仕事で家を空けている夫B氏に電話をし、朝起こしてくれるように頼みました。
「8時から9時半の間で、手が開いた時に電話して」
「おぅ、任しておけ!」

今、10時半です。
煙突掃除人は来ていないし、B氏からの電話もありません。

煙突掃除が終るまで薪が焚けないから、足が冷た〜くなってるし、昨日の雪かきで、首も回らないほど背中が筋肉痛だし

・・・・・・なんか私、みんなに裏切られた気分だわ。


(以前の日記『薪割りにおける人間考察』の続き、ちゃんと書きますので、もうちょっと待っていて下さい。)

2008年12月11日 (木)  薪割りにおける人間考察。 2

                〜前回からの続き〜
     (先月末の日記、『薪割りにおける人間考察 1』の続きです。)

二番目のカテゴリーは、村の中高年男性達です。

彼らは、元々この村で生まれ育った、もしくは私達夫婦の様に、簡素な田舎暮らしが平気な者達ですから、薪割りはやはり毎年の行事です。
ただ、今は機械も発達していますから、私の様に手で割る人は殆どいませんが。

彼らは、それが男性にとっても大変な労働である事を知っていますから、小柄な女性である私が、道端で斧を振り上げている姿を見ると足を止め、先人として懐かしそうに承認の眼差を送ります。
「そうだ、私も昔はそうしていたよ。君は良くやっている」という具合に。

そして、その後彼らは、村の他の人達に話すわけです。
「みんつは、手で薪を割っているぞ。最近は、村の若い男でも機械を使うのに、あの子は大したもんだ」
その様子は、時に愉快そうですらあります。

そう、こういうド田舎では、汚れ仕事や重労働を進んで行う者は、認められるのです。
ま、彼らのコンプレックスですね。

先日は、こんな事もありました。
バレー・ボールをやっている時の事です。

私は、中学生の時からフローター・サーブという上から打つサーブをするのですが、スイスではバレー・ボールが盛んでないからか、未経験者が多いからか、我がチーム内でこのスタイルのサーブを打つのは、私の他には身体の大きな男性だけなのです。

ご存知ない方もいるかも知れませんので、ちょっと説明しますと……

このサーブは、ボールにきちんと掌の硬い所(手首のすぐ上の所です)が当たれば、普通に飛んで行くので、特に屈強な肉体は必要ありませんし、実際、ボールの空気抵抗による変化などを上手く利用するには、強く打つ必要もないのですが、何故かチーム・メイトは、「強い腕力がないとこれは出来ない」と思っている様なのです。

そして、ボールが空気抵抗により手前で急に変化するから、その屈強な男性陣でも、私のサーブをレシーブ出来ない場合があります。
しかし皆は、腕力が勝負と思っていますから、女性陣は試そうとすらしませんし、男性陣はこれでもかという風にボールを強打し、ネットに掛るかアウトか、という様なサーブになります。

何が言いたいかというと、これはテクニックであって腕力ではないという事です。

でね、先日もそんな場面があったわけです。
私の打ったサーブが、ある男性(身長180cm強)の所に飛んで行き、その男性はレシーブが出来ずに体勢を崩し、前に倒れたのです。

簡単な話、来ると思った場所の手前でボールが落ちたから、それを取ろうとして、前に倒れたわけですよね。
が、これが彼らの目には、こう映った様です。
「みんつの力強いサーブが、屈強な男をも倒した」

向かいのコート内では、村の男性陣が囁き合っています。
「知っているか? みんつは、薪割りをしているんだ」
「あぁ、俺も見た。機械ではなく、斧で割っていたな」
「だろう! このままみんつが薪割りを続けたら、俺たちは勝てなくなるぞ」

……だから、違うって。

                      〜次回に続く〜

2008年12月15日 (月)  薪割りにおける人間考察。 3

             〜前回からの続き〜

村の中高年男性達と対称的な反応を示すのは、村の老女達です。

彼女達は、元酪農家かそういう人を身近な家族(親や兄弟等)に持つ人達ですから、薪割りは、やはり何十年と続いた毎年の行事なのですが、一つだけ、私とは大きな意識の違いがあります。
それは、「薪割りは男の仕事だ」という事です。

ですから、Tシャツ1枚で斧を振り上げ、薪を割っている私に、彼女達はこんな話し方をします。

「あらみんつ、そんな格好で寒くないの?」
「いいえ、汗びっしょりですよ」
「薪割り、大変じゃない?」
「うーん、慣れて来たから、そうでもないかな」
「でも、力が要るでしょう?」
「いいえ、力はそんなに要らないんです。木が十分に乾いてさえいれば、勝手に割れてくれますから」

「私達も昔は、手で薪を割ったものよ」
「???」(みんつ、心の声:じゃ、何で「力が必要か?」なんて聞くの?)
「今は皆、機械で割っているけど」
「そうみたいですね」
「みんつは、機械は使わないの?」
「ええと、私は機械を持っていないから。でも、良いトレーニングにもなるし、結構好きなので、自力でやれる内はこのままで良いかな、何て思っています」

「でも、斧は重いでしょう?」
「斧は、それ程でもないです。ハンマーの方が重いですよね」
「そうなの?」
「???」(みんつ、心の声:昔はやっていたんじゃないの?)
「私は、薪割りはやった事がないから、知らないのよ」
「???」
「私達が昔やったのは、男性が切り出した小枝を集めて縛るだけだから」
「あぁ……」

「みんつは、小さい木から割っているの?」
「いいえ、良く乾いている木からです」
「でも、大きい木は大変だから、旦那さんがやるのでしょう?」
「夫B氏は、今年は忙しくてやれないんですよ。それに木の大きさは、あんまり関係ないんです。ひびの入っている所に斧の先を当てれば、乾いている木は勝手に割れますよ」
「そうなの……」

こんな会話は、ほのぼのとしていて良い感じですよね?
そう、ここでこうやって、一回読むだけなら。
しかし実際には、この会話が毎日毎日、同じ人達と何度も何度も繰り返されるんです!

……うぉ〜っ! Tシャツ1枚は寒くないし、斧は重くないし、大きい木も私が割るんだっ!! それから、機械は持ってない!! 文句あるかぁっ?!

                  〜次回に続く〜

2008年12月17日 (水)  薪割りにおける人間考察。 4

               〜前回からの続き〜

薪割りで難しいのは、枝です。

輪切りにした丸太は、穴のないバーム・クーヘンの様になっているわけですが、物によっては、かなり中心に近い年輪の所から、枝が伸び出している時があるのです。
枝が、丸太のどのぐらい深くまで入り込んでいるかは、割ってみないと分りません。

枝の数が少なければ、そこを避けて割れば良いだけですから、問題はありませんが、時には細い丸太であるにも関わらず、何本もの枝が生えている木もあります。
こういう場合、それらの枝の幾つかは、斧で断ち切らなければいけなくなります。

その方法は、私の知る限り2つあります。

一つは、生えている方向に沿って平行に斧を当て、枝ごと丸太を割ってしまいます。
この方法は、その場所にきちんと斧が当りさえすれば、案外簡単に割れます。
まぁ、枝がねじれる事なく真っ直ぐ伸びている、という前提でですが。

もう一つは、枝に直角に斧を入れ、無理やり力で叩き割る方法です。
つまり、予め丸太をある程度の大きさに割ってから、枝が粉砕するまで、がんがん斧を叩き付けるのです。
これは全ての枝に通用しますが、非常に体力を消耗しますから、私としては、出来れば避けたい最後の手段なわけです。

ところがこの最後の手段は、定期的に向こうからやって来ます。

そう、簡単な話、煖炉にくべられる薪の大きさは限られていますから、大きな丸太で何本も横枝が伸びている場合、どれかは叩き割る羽目に陥るわけです。
もしくは、外側からは見えない場所に枝が生えていて、斧が偶然そこを噛んでしまう――斧が強く入り込んで、抜けなくなってしまう――場合もあります。

先日もそんな1本に当り、私は、このまま叩き割る方と斧を抜く方、どちらに力を注ぐべきか決めかね、割りかけの薪がぶら下がった斧を、台に打ち付けていました。

「あぁ、違う、違う! そんなやり方じゃ駄目だ!」
見ると、大家W氏が(正確には、大家は妻の方ですから、その夫です。)歩いて来ます。
私は、割れた薪が当ると危険ですから、斧を下しました。

「薪割りは、そんな風にやるんじゃない」
「……」(みんつ、心の声:いきなり何、この人? 普通誰かに会ったら まずは挨拶じゃないの?)
「薪割りは、丸太の縁の方に斧を当てなくちゃ駄目だ」

W氏の言う事は、基本的に合っています。
しか〜し!

毎回、自分の思った場所に100%斧を当てられる人物は、果たして何人いるでしょう?
私だって、本当の狙いは別の場所でしたが、2cmぐらいのずれが出、運悪く枝を噛んでしまったのです。

「私が今手こずっているのは、枝に当たってしまったからですけど……」
「大体、こんな大きな木は、ハンマーで小さくしから、斧で割るんだ」
「……」(みんつ、心の声:はぁ? これが大きい木? 私の腕力で振り回せる程度ですが?)
「貸して」
そう言うとW氏は、私の手から斧を取り上げ、食い込んでいた薪を外しました。

「すいませんが、あそこの壁際にずら〜っと並んでいる、薪を見て下さい。あれは全部、私が一人で割りました。分りますか? 私だってどうやったら薪が割れるか、知っていますから、ご心配なく。それから、貴方が無防備に近づいて来るから、私は手を止めたんです。割れた薪が飛んで行く事、ご存知ですよね? 貴方がそこから退いてくれたら、私は自分でこの薪を割れるんですけど」

この後、W氏は何やら呟いていましたが、私が「そこに立たれると、危なくて薪割りが出来ません」と言うと、挨拶もせずにこそこそ帰って行きました。

……ふん、あんたの家がセントラル・ヒーティング完備だって事ぐらい、私は憶えているんだよ。いくら大家だからって、その口の利き方は横柄すぎ。

                  〜次回に続く〜

2008年12月19日 (金)  薪割りにおける人間考察。 5

                 〜前回からの続き〜

薪割りを始めてから暫く経った頃、近所の男の子A太がやって来ました。
A太は、幼稚園の年長さんといった年頃で、プラスティック製の子供用トラクターにまたがったまま、黙って私の作業を見詰めています。

近所の子供が側で遊んでいるのは、私にとって珍しい事でもありませんから、本来なら何の問題もありませんが、このA太に関しては、少々戸惑いました。
否、正直に言うなら、一瞬「このまま相手にしないでいたら、飽きて何処かに行ってくれるかな?」と思いました。

というのも、A太の両親が幾分変わった感じなのです。
妻の方は、何となくおどおどしているとでもいうか、道で会っても目を合わせない、こちらから挨拶しても、ぼそぼそっと返事が来るという具合で、家が隣(私の畑を挟んで向かい)にも関らず、全く交流がありません。

夫の方は、噂で聞いた話では、貿易関係か何かの仕事をしていて海外出張が多い為、年の内数日間しか家には帰らないとか。
その、家にいる数日間にしても、室内に籠もっているのか、外でA太やその弟と遊んでいる姿は、見た事がありません。
また、私が外で挨拶をしても、その存在自体を認めないかの様に、無視をします。
仕事で色々な国を飛び回っている男性にしては、変ですよね?

ですから私は、最初、出来ればA太と関わりたくないと思ったのですが、そんな私の思惑とは裏腹にA太は、トラクターをゴロゴロと鳴らしながら、私の周りをうろついています。

私は、自分自身に子供がいませんので、本当のところは分っていないかも知れませんが、基本的にこんな風に考えています。
子供というのは、その子が属する社会全体の責任だ、と。

例えば両親に恵まれなかった場合でも、親戚だの近所の大人だの学校の先生だのに恵まれれば、その子は全うに育つし、逆に、社会がその責任を果たさなければ、そのツケも社会に回って来る、と考えているのです。

……親が変でも子供に罪はないし、可哀想だよな。
そう思った私は、思い切ってA太に話しかけました。
「君が乗っているの、それ、トラクターだよね?」
「うん。子供用のトラクターで、本物そっくりに出来ているんだよ」
「ってことは、後ろに付ける荷台もあるのかな?」
「うん。家に、お〜っきいのがあるよ」

「ふふふふ、じゃぁ、君に任務を与えよう。そこにある、私が切り出した薪をトラクターに積んで、あっちの壁際まで運んで欲しいんだけど、やる?」
「やる! じゃ、すぐに荷台を付けて来るから、待ってて!」

周りでうろうろされるだけでは、正直危ないですし、私の子供に対する考えには、こんなものもあります。
子供は、外で泥んこになって遊んで、夕飯時に船を漕ぐぐらい疲れた方が良い。

これは、その子供の性質なんかもありますから、全員には当てはまらないかも知れませんが、トラクターを買ってもらいたがる様な子供は――服装も、その辺を飛び回っているかの様に、適度に汚れていますし――見ているだけでなく、何かやらせた方が良いでしょう。

さて、トラクターに荷台を付けて戻って来たA太ですが、私の予想を見事に裏切ってくれました。

いやぁ、確かに彼の祖父は元酪農家ですから、今までも色々と手伝ってはいるのでしょうが、A太は、まるで一人前の成年かの様に、辺りが薄暗くなるまで、黙々と薪を運び続けました。

「おぉ〜、すごい助かったよ。君のおかげで、いつもより薪がたくさん割れた。ありがとうね」
するとA太は、目を輝かせてこう聞きました。
「薪割り、明日もやる?」
「やるよ。っていうか、ここの丸太が全部無くなるまで、晴れの日は毎日やるよ」
「じゃ、明日は晴れだったら、ハンマーを持って来るね! 僕、子供用のを持ってるから」
そういうとA太は、勢い良くトラクターを押して、家に帰りました。

……ハンマーで丸太割りって、幼稚園児にも出来るのか?!

                   〜次回に続く〜

2008年12月23日 (火)  薪割りにおける人間考察。 6

               〜前回からの続き〜

さて翌日。

子供用のハンマーと楔を――確かに、私の物より短く小さいですが、別途用なのか、本当に子供用なのかは分かりません。――トラクターに積んで現われたA太は、自分の身体より大きな丸太を一人で転がすと、がんがんと音を立てて、勢い良く割り始めました。

「すごいなぁ、君は。一人で何でも出来るんだね。じゃ、そっちは任せたから、手伝いが要る時は言ってね」
「うん、僕、一番大きい丸太から割るね」
そしてA太は、私が本気で薪割りをするのといい勝負の速さで、丸太を手頃の大きさに割っては、私の取りやすい場所に積み上げて行きます。

いやぁ、私は自称『ハード・ボイルド主婦』ですが、ハンマーで薪を割り出す幼稚園生には、心底「あっぱれ」です。

私達が黙々と作業をこなしていると、A太の母親が、窓から顔を出しました。
「A太、寒いから、ジャケットを着なさい!」
「寒くないから、大丈夫」
「良いから、ジャケットを着なさい。でないと、風邪を引くわよ」

前回も書いた様に、彼の母親と私は殆ど交流かありませんし、スイスでは、よその子供に関して他人が口を出すのは、タブーです。

しかし、斧で薪を割っている私が、既に汗だくなのですから、私より重労働をしているA太は、絶対に汗をかいている筈です。
そんな状態でジャケットを着るのは、気の毒なだけでなく、のぼせてしまうのではないでしょうか?

ところが、そう伝えるべきかどうか、私がほんの少し迷っている間に、A太の母親は、それだけを言うと、室内に引っ込んでしまいました。

「どうする?」という顔をする私に、A太は、そんな母親に慣れているのでしょうか、ひょいと肩をすぼめて見せると、黙ってジャケットを羽織りました。
……この子は、大したもんだなぁ。

「うちにオレンジ味のシロップがあるけど、飲む?」
ジャケットを着ての薪割りでは、暑いだろうし、脱水症状を起こされても困るので、私は、せめて冷たい飲み物でも持って来てやろうと思い、そう聞きましたが、A太の答えはこうでした。
「喉が渇いたら、そこの泉の水を飲むから大丈夫!」

……ふん、トラクターを転がし、汗だくになって薪を割り、喉が渇いたら泉の水を飲む。もう君は、いっちょ前の酪農家だな。

その日の作業が終ると、A太は、また聞きました。
「明日も薪割り、やる?」
「明日は、日曜日だからね。日曜日は、スイス人は働かないんでしょう?」
「うん、日曜日はお休みだね」
(* 日曜日は安息日なので、キリスト教の国であるスイスは、静かに過ごすのが一般的です。)

「天気が良かったら、月曜日にまたやるよ」
「月曜日と火曜日は、僕、幼稚園があるから、水曜日に来るね」
「OK。でも、雨だったらお休みね」
「うん、天候に応じてって事だね」

「そう。まぁ、どっちにしても、斧の音が聞こえたらやっているって事だから。君の家からも聞こえるでしょう? あぁ、それと、お母さんに『汗かいたから、シャワーを浴びたい』って言った方が良いよ」
「分った! じゃ、またね」

元気良く帰って行くA太の後ろ姿を見ながら、私は「今度買い物に行ったら、お礼のチョコレート・バーでも買って来るかな」と思いました。

                〜次回へ続く〜

2008年12月29日 (月)  お知らせ。

只今みんつ、村の婦人会でパン焼き中。

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