2007年2月1日 (木)
続・小説より奇なり 2
〜前回からの続き〜
【N嬢の場合 1】
N嬢は30代後半で、正確に言えばスイス人とドイツ人のハーフですが、スイスで産まれ育ち、内面的には100%スイス人と言って良いと思います。 彼女には3人の子供(現在確か、M美14歳、L太13歳、L美11歳)がいて、現在は恋人のU氏(父親ではない)と5人で暮らしています。
N嬢は、私の女知人の中では、一番古くから知っている人物ですが、最も知らない人と言って良い存在です。 何故なら、彼女とは、深い話が出来ないからです。 私が、どんなに個人的な問題や本音を話しても、N嬢が同じ様子でそれに応える事は、決してありません。 「いつだって私の場合、全ては上手く行っている」という風なのが、N嬢です。
N嬢が、元夫であったM氏と離婚をした時も、私達知人は、その事について一言も聞かされてはいませんでした。 「私達は、深く愛し合った理想のカップル」から、一気に「離婚」という感じです。
しかし私は、N嬢の離婚、そしてその最中にM氏に何が起こったのかを知った時、特に驚きはしませんでした。 ただ、誰とも自分の問題に付いて話す事の出来なかった2人を、残念に思っただけです。
というのも、M氏が幸せそうにしていた顔を、私は見た事がなかったのです。 いえ、はっきり言うなら私は、M氏が自滅しそうであると、心配していました。 無理をしていて、既に一杯である、という印象を受けたのです。
しかし、当時の私は、N嬢・M氏夫妻と知り合ったばかりでしたし、言葉も殆ど出来ませんでしたから、夫B氏に「M氏には、悩みがあると思うから、機会があったら、それとなく話を聞いて」と告げるのが精一杯でした。
では、「いつだって全ては上手く行っている」N嬢に、何があったのか?
理由は知りませんが、ある頃からN嬢は、離婚を考え出した様です。 そして、周りの男性達と、関係を持ち始めました。 近所の人、仕事仲間、私達の知人……。 その中の一人A氏とN嬢は恋に落ち(と、皆は言っています)、ついに、M氏に離婚を切り出します。
そんなある晩、仕事から戻ったN嬢が見たのは、床に血だらけで倒れているM氏と、それを囲むようにして覗き込んでいる、小さな子供達(当時、長女M美は5、6歳)でした。 そうです、自殺を図って首を切ったM氏が、死に切れずに、床の上で転げていたのです。
その後、M氏と入れ替わる様にして、N嬢はA氏と同棲を始めました。 今まで皆の溜り場となっていたN嬢宅は、それを切っ掛けに、遠い場所になります。 知人達が常に出入りするのを好んでいた筈のN嬢は、すっかりA氏の陰に隠れてしまい、私達がN嬢に会えるのは公式なパーティーのみ、という時期が5年位続きました。
私が、そろそろ「N嬢との関係を止めてしまおう」と思い出した頃、A氏はN嬢宅を去りました。 理由は、「自立した強い女性を選んだ筈なのに、N嬢が頼りっ切りになった事が不満」というものです。 それでもA氏は、N嬢宅の2軒先に一軒家を借り、2人は今も親しい友人関係にあります。
さて、A氏と入れ替わりに、N嬢の恋人になったのが、現在の同棲相手U氏です。 実はこのU氏、元夫M氏がいた時から、N嬢宅に間借りをしていまして、A氏がいた時も、やはりそこに住んでいたのです。 そして、もっとややこしい事に、N嬢の結婚前の恋人は、U氏の親友と言って良い人物なのです。
ある時、N嬢の次女L美が、私に言いました。 「最初はパパでしょ。その次がA氏で、今度はU氏がママの恋人なの。何だか変よね」
そんなN嬢とU氏は、現在長女M美の事で、悩んでいる様です。
〜次回に続く〜 |
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