2009年2月3日 (火)
なすべき時? 2
〜前回からの続き〜
何度か書いていますが、私は、村でバレーボールをしています。
これは成人の男女混合チームで、各自の年齢も職業も様々なら、出席頻度も経験も運動能力も目的も……何もかもが様々です。 唯一の共通事項は、全員がこの山にある村の何処かに住んでいる、という事です。
私がこのチームに参加した時、少しでもバレーボールの経験があるのは、私以外には、スイス人女性I嬢とドイツ人女性のT嬢だけでした(チーム内での外国人は、このT嬢と私だけです)。
そして初日、私のプレーを見た二人は、練習後の女子更衣室で言いました。 「みんつが皆を指導してくれないかしら?」 これまではI嬢がその役割をしていたのですが、自分で店を経営している彼女は、あまり頻繁に出席出来ない上、指導の準備等をする時間が取り難いらしいのです。
「うーん、でも、私のやり方は日本式だろうし、何よりも新入りが大きな顔をして指図したんじゃ、皆、気分を害さないかしら?」 そう言う私に、更衣室にいた女性メンバーが皆、口を揃えます。 「新入りか古株かなんて関係ないし、私達はインター・ナショナルなプレーを目指すから」 「でも、私のやり方は、本当にスイスのとは違うかもよ」 「平気、平気。誰もバレーボール自体が分っていないんだから、どんなやり方でも問題ないわよ」
ということで、その後私は、何となくチームを引っ張って行く様な立場になり、幸運な事に、チームのトーナメントでの成績も上がり始めました。
まぁ、ゼロのチームに何かを教えれば、機嫌さえ損ねなければ、結果はプラスですから、この最初の進歩は、さほど難しい仕事ではないのです。 ただ、結果がすぐに見えた為、皆の私に対する信頼は、幾らか築けた様ではありました。
そんな風にして1年強、私は、(特に男性陣を)おだてたりすかしたりしながら、各自の長所を伸ばす方向でチームをまとめ――大人になってから始めるスポーツですから、不得手な部分の矯正は、楽しくないだけでなく限界があると思うので――そろそろ第2段階に入っても良いかな、というところまで来ていました。
そんなある日、R氏・J嬢夫妻が新たにメンバーとなりました。
R氏は、身長185cm強というところでしょうか、そのイルカの様にすらりとした体格は、如何にも普段からスポーツをしている、といった感じです。 トライアスロンとか水泳とか、そんな競技をしていたのではないかという雰囲気です。
J嬢は、身長170cm弱でしょうか、正統派美人といった顔付きの割には、本人はその事に気付いていない風で、大きな声で笑う気さくな女性の様です。 ただ、「悪気はないけど、ほんのちょっぴり場の空気が読めないかな?」という感じもしました。
二人とも40代半ばぐらいでしょうか、学校の先生をしていて、バレーボールの経験者である事は、練習を始めてすぐに分りました。
R氏は、アタックとブロックに問題のある我がチームにとって、「これで、やっとエースが出来た」と思わせる程で、元セッターであった私には、わくわくする存在になりそうです。
J嬢の方は、R氏のサポートに回るようなプレーが多く、私は少し気になりましたが、この日は初日ですから、見知らぬメンバーの中で自分の夫に頼りがちになる気持ちは、分らなくもありません。 今後チームに慣れて行けば、そこは経験者です、他のメンバーとの連携も自然に出来る様になるでしょう。
「貴方達が参加して嬉しいわ。これからも、また来るでしょう?」 練習が終り家路に向かう二人を、私は呼び止めて言いました。 というのも、試しに1回やってみて後は来ない、という人も結構いるからです。 「うん、これからも来るよ」 二人はそう答え、その後は、毎週参加する様になりました。
新たに二人の経験者を迎え、特に一人は、私が理論しか教える事の出来ない、アタック・ブロック部門を任せられる人物ですから、これで我がチームは「めでたし、めでたし」となる予定だったのですが……
〜次回に続く〜 |
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