2010年2月5日 (金)  何でそ〜なるの? 5

                〜前回からの続き〜

何でそうなるの?!
私は、何回も何回も会員になりたくないと言っているのに。
プレゼントは、別の物でも構わないとも言っているのに。
その別のものを考える時間は、私の誕生日もクリスマスもまだ数ヶ月先なのだから、十分あるのに。

会員申込書の葉書を手に微笑んでいる義母を見て、私の頭の中は急回転です。
「とにかく、あの葉書を出させないようにしなくては」

見ると、その葉書はかなりセピア色になっています。
「お義母さん、その葉書、すごく古くないですか? 有効期限とか、あるんじゃないですか? ちょっと見せて下さい」

ビンゴです。
葉書は、有効期限こそ書いてありませんが、10年近く前のものです。
「あぁ、これは古いですね。ひょっとすると無効じゃないかしら。会社の住所が変更している可能性だってあるし」

そういう私に、義母は自信満々の笑顔を返します。
「とにかく、送ってみましょう。戻ってきたら、またその時考えれば良いじゃない」
……否、否、だから、そいつを送って欲しくないんだってば。

ペンを取りに行った義母を慌てて追い掛けると、私は再度試みます
「ぁ、じゃ、これは私が貰っておきます。家に帰って書きますから」
こういう緊急時は、嘘も方便ですよね?
「出したけど、戻って来ちゃいました。でも大丈夫、他に欲しい物が見付かりましたから」
とか言って、別のものをリクエストすれば良いだけですものね。

ところが義母はねばります。
「ペンはここにあるわ。今、貴方の住所を書いて、やることはやってしまいましょう」
机に座って、私の名前を書き始める義母に、何とかそれを阻止したい私は、言います。
「ぁ、自分で書きます」
ここまで来たら、私がわざと間違った住所を書いて、「ぁ、間違えちゃった」と葉書をくしゃくしゃにしたとしても、皆さんは許してくれますよね?

しかし義母は、私の隣に立ち、私の手元を注視しながら、住所をゆっくりと読み上げます。
義母に言われるまま、ペンを動かすしかなかった私のチャンスは、あと一つだけです。
「じゃ、これは私が、帰りにポストに投函しておきますね」

が! ここでも!!
そう言って席を立とうとする私の手から、義母は素早く葉書を奪います。
「これは私が、郵便局に持って行くわ」
「いえ、いえ、お義母さん、それは今日私が、帰り道のポストに入れていきますよ。わざわざお義母さんが、郵便局まで行く必要はないですから。さぁ、その葉書を私に下さい」

「ううん、良いの。明後日、どうせ郵便局に行く用事があるから、その時に一緒に出すわ」
「否、否、否、私が今日投函してしまえば、ことは一つ片付くじゃないですか。私がやりますよ」
「でも、これは切手が必要だから。今私は、切手の持ち合わせがないの」
「あぁ、切手ぐらい私が貼ります。家にいっぱいありますから」
「それは駄目よ、プレゼントなんだから」……

かくして私は、ある調理器具関連販売会社の会員となり、毎月そこのレシピ雑誌が、私の元へ届くことになりました。

そしてその日の夜、戦いに敗れて家で「どよ〜ん」としている私に、夫B氏が怯えていたのは、言うまでもありません。

                   〜完〜

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