2006年3月7日 (火)
愛しちゃったのよ
何度か書いていますが、我が夫B氏は基本的に日本語を理解しません。 どこかで習ったこともなければ、私も特には教えていないからです。
それでも以前、私の実家に1年ちょっと住んでいたことがありますので、幾らかの会話は出来ますし、せっかく覚えた日本語はやはり使いたいようで、気に入った言葉などは、普段の生活の中でも、幾らか使ったりしています。 ただ、B氏の日本語は耳から覚えたものですから、何というか、妙な所があるのです。
例を上げてみましょうか。 ある朝、自分の部屋で髪を梳かしていた私の所にB氏が来て、言いました。 「みぃ〜つけ!」(=見付けた) その言い方は歌うような可愛らしい感じで、幼稚園生である私の姪っ子の口調にそっくりでした。 はい、そうです。妹の家で姪っ子達が、かくれんぼをしているのを見ていて、覚えたのです。
また、B氏は家に帰ると必ずこう言います。 「ただいまぁ〜っ!」 これがまた、元気の良いやんちゃ坊主が帰って来た、とでも言う調子なのです。 どんなに疲れていても、仕事で嫌なことがあっても、この「ただいま」だけは溌剌としています。 ええ、私の甥っ子達(小学校の高学年)が、ランドセルを玄関口に放り投げながらそんな言い方をするのです。
こういうB氏の日本語ですが、私は一切直しません。 決して間違いではありませんし、190cm近い厳つい外国人の大男が、こんな日本語を話したら、面白いですよね? 妻としては、この際B氏には、じゃんじゃんそういう言葉を話して、人気者に成ってもらおうと思っています。
さて、週末のことです。
最近のB氏は、暇を見ては日本滞在時に撮ったビデオの編集をしているのですが、そのBGMとして、日本の音楽を入れたいようで、我が家では頻繁に『サザン・オール・スターズ』の曲が流れています。 中でもお気に入りは、原坊の歌う『愛して、愛して、愛しちゃったのよ』だそうで、これは私に、「歌詞をひらがなで書いて、訳を付けてくれ」と頼んだほどです(B氏は、ひらがなだけ読めるのです)。
そして、先週末にも『美空ひばり』を間に挟みながら、『サザン・オール・スターズ』は雪の降るアルプスに向かって歌っていました。 知っている曲もたくさんありましたので、側で聞いていた私は、自分のことをしながら、時々一緒に歌ったりしていました。
暫く経つと、原坊の声が聞こえてきます。 もちろん、B氏のお気に入りの曲です。 そして、それに合わせる様にして、B氏の歌う声も聞こえてきました。 「!!!!!」
「B氏、ちょっとそれは……あはははは」 いきなり笑い出した私に、B氏は不安そうな顔で聞きます。 「えっ、俺の日本語、間違っている?」 「ひひひひひ……正確に言うなら、日本語自体は間違いではないけど、原坊が歌っているのとは、ちょっと違うんだよね。……否、良い! そのままで大丈夫。B氏は、そういう歌い方の方が良いよ」 「そう?」 「うん、自信持って続けて!」 私の言葉を信じ、B氏はまた歌い出しました。
「♪愛しちゃっただよ。ららら〜ら。愛しちゃっただよぉ〜♪」 |
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