2008年6月2日 (月)  迷探偵みんつ、再び。 2

                 〜前回からの続き〜

「出て来た石で、壁でも作ろうか」

そう考えたのは、もちろん私の畑が傾斜していて、土留めが必要である事もありますが、そう思わせたのは、出て来た石の形状だったのです。

どういうことかというと、その石は、見るからに「積み上げて、壁でも作ってくれ」という風なのです。
平らで、四角い石の板。

変ですよね?
畑から出てくる石が、ことごとく、まるで人工的に切断されたかの様に四角いなんて。

こうなると私は、気になって仕方がありません。
先程まで、無造作に隅に積み上げていた石の所に行き、それらをもう一度手にとって、じっくりと形を調べました。
見れば見る程、それは人の手によって切断された、としか思えません。

こぶし大の小さな石も――この時点でこぶし大の石は、私にとって小さな石となり、それ以下の石は、除く必要もない小砂利となっていました――断面が人工的ですし、中には歩道の石畳の様に四角いものもあります。

……これは、絶対にただの石じゃない。自然に出来た石が、こんなに四角いわけがない。断面だって綺麗過ぎる。

私は、その後も掘り出される石を、慎重に観察しました。
すると、やはり大抵のものが、切断されたかの様に四角いのです。
私の頭の中では、色々な空想が展開されます。

……この畑には、きっと何か建物が建っていた筈。家かな? でも、こんなにたくさん石が出るとなると、家ではないかな。……はっ!!

ここで私は、重要な事に思い当たりました。
石の大きさに気を取られていて、今までは気にしていませんでしたが、実は、私の畑からは、石以外にもあるものが、正確に言うなら3種類のものが、たくさん出て来ていたのです。

その内の2種類は、朽ちかけた木材と五寸釘です。
これだけなら私は、家が建っていたと考えたでしょう。

少々石の割合が多過ぎではありますが、この辺の住宅には、石造りの地下倉庫がありますから、木材が少ないのは、大半は処分され、ここに捨てられた物は、既に腐って土となってしまったのだろう、と考えたと思います。

しかし、私に決定的なイメージを与えたもの、それがもう一つのものなのです。
掲示板で時々冗談に書いていましたから、覚えている方もいるかも知れませんが、そう、私の畑からは、動物の骨や歯がたくさん出て来ていたのです。

顎の骨の感じから私は、それは犬か狐だと思っていて、飼っていた犬が死んだのを埋めたのか、狩って来た狐をここで捌いていたのだろう、と思っていたのですが、この綺麗に切断された石と組み合わせると……

分りますか?
パズルの駒がぴったりとはまる答が、他にありますよね?

私の様な都会育ちの素人からすれば、犬や狐と山羊の顎(の骨)は、同じ様に見えませんか?
では、山羊ではなく、羊はどうでしょう?
もう少し飛躍して、仔牛あたりは?

そうです、この畑に建っていたのは、家畜小屋です!!

                  〜次回に続く〜

2008年6月5日 (木)  迷探偵みんつ、再び。 3

            〜前回からの続き〜

「以前私の畑に建っていたのは、家畜小屋に違いない」

我が家の周りには、現在もたくさんの牛舎が建っていますが、それらは皆こんな作りです。

基礎の部分約1階分には、大小様々な石が積み上げられ、その隙間を埋める接着剤として、モルタル(セメントも?)が使われています。
その上の部分には、大きな横木を組み合わせた建物――きっと五寸釘は、ここに使われているのですよね――が乗っています。

ね、ぴったり合いますでしょう?

「うーん、気になる。ここには、きっと家畜小屋が立っていた筈菜のだけど、どうしたらそれを確かめられるかな? 役場に行ったら、昔の写真が載った資料とかあるかな?」
役場のG氏は、私のバレー・ボール仲間ですから、ちょっと頼めば資料を探してもらえるかも知れません。

そんなことを思いつつ畑を掘っていると、いつもの様に、下の階に住むお婆ちゃんが出て来ました。

「みんつ、今日も頑張っているわね」
……そうだ、お婆ちゃんは、ずっとこの村で暮らしているのだから、何か知っているかも知れない!

「お婆ちゃん、この畑って、前に何か建物が建っていましたか?」
ところがお婆ちゃんは、気のない様子で答えます。
「さぁ、どうかしらね。私は知らないけど」
「……」

私の推理を確かめるには、やはり、役場に行くしかないのでしょうか? 
……今度G氏に会ったら、そんな資料がないかどうか、聞いてみるかな。

ところがG氏は春休み中で、役場は閉まっていましたし、もちろんバレー・ボールにも顔を出しませんでしたから、私のこの疑問は、暫くの間宙に浮いた形となっていました。

そんな風にして2〜3週間が過ぎたある日、まだ畑を掘っている私に、お婆ちゃんが言いました。

「みんつの畑からは、随分大きな石が出てくるね。大仕事でしょう?」
……そうなのよ、その原因が知りたいのよ、私は。
「まぁ。いっそ積み上げて、壁でも作ろうかと思っているんですけどね」
「へぇ、良いじゃない。そうなったらきっと、村中の人が見に来るよ」

そんな笑えない冗談に付き合いつつ、私は、何気なく言いました。
「この石、みんな綺麗に切断されているんですよ。四角くて平らで、まるで、建物の土台か何かに使われていたのじゃないかな、って感じなんですよね」

するとお婆ちゃん、今度は隣の敷地を指差して、いとも簡単に言いました。
「そこの牛舎があるでしょう。それがね、昔火事になったのよ。その後で再築する時に、瓦礫をみんなそこ、みんつの畑に捨てたのよ。その石は、多分その時のだと思うわよ」
「!!!」

あぁ、やはりそうだったのです!
場所こそこの畑ではありませんでしたが、確かに家畜小屋は建っていたのです!!
そう、私の畑に埋まっていた、石、木材、五寸釘、そして動物の骨は、元家畜小屋の残骸だったのです。

……え?! って事は、このたくさん出てくる骨は、火事で……否、否、この辺は、あまり考えないで置きましょうね。

こうして謎も解け、さっぱりしたみんつは、今日も元気で畑掘りに出掛けましたとさ。
お終い。

2008年6月11日 (水)  1999年生まれ、北海道出身。

日本はそろそろ梅雨の季節になり、皆さんは、暑く鬱陶しい日々を過ごしているのでしょうか?
ここアルプスは……

寒い!
何なんでしょう、ここ数年夏が寒い様な気がしますが。
というわけで、今も私は靴下を2枚履き、薪を焚くべきかどうか迷いながら、冷たい手でキーボードを打っています。

天気はそんなに悪くないのですが、窓を開けて暖を入れるほどではありませんし、外の日向に出ていれば暖かいのですが……
そうそう意味もなく外には居られませんよね、実際。

それでも私はここ1ヵ月間ぐらい、皆さんもご存知の様に、午後になると外に出て、せっせと庭を掘っています。

これは、雑草はもちろん、不要にはびこった花を除き、畑の部分を広げているのです。
そして、勢いが付いた私は、元々植わっていた花を掘り返し――計画も無く適当に植えたのか、それぞれの種の生えている場所や咲く時期、色のバランス等が悪いのです――別の場所に移動させたりもしています。

その結果がどうなったかというと……

花に疎い私の目に雑草だと映ったものは、全て引き抜かれ、その代りに野菜が植わり、隅には大量に掘り出された石が積まれ、そんな試練にも負けない雑草が再び芽を出し、私自身は、フィリピン人に間違えられる程、真っ黒に日焼けしました。
ここは山の上ですからね、涼しくても、あっという間に日焼けするのです。

日本にいるお洒落で美しい妹達は、そんな私のしみやそばかすを心配してくれますが、ここスイスでは、肌の色が濃くなると男性からの注目度が増えますので、私は、気にせず焼けるままにしています。
ま、男性からの注目がなかったとしても、元々ずぼらな私は、そんなこと気にしませんが。

さて、そんなある日、私はちょっぴり自慢げに、それでもさほど深く考えず、夫B氏に肩を見せて言いました。

「すごいでしょう、こんなに日焼けしたよ」
「うーん、肩ひもの跡がなぁ。俺は、全部綺麗に焼けている方が好きだな」
「そんなこと言ったって、裸で庭を掘るわけにはいかないし、無理だよ」
「トップ・レス位なら、良いんじゃないか」
「否、それはちょっと」

ひとしきりそんな冗談を言った後、B氏が真面目な顔で言いました。
「でも、気を付けてね」

あぁ、そうですね。
オゾンの問題だの皮膚ガンだのとありますから、あんまり無防備に焼いてはいけませんよね。
普段はふざけてばかりで、あまりそういう態度は見せませんが、B氏もやはり夫です、妻の健康が気になるのですよね。

そんなB氏の心遣いに感謝し、少し反省した私は、真摯に言いました。
「そうだね。この次は、ちゃんと日焼け止めのクリームをぬる事にするよ。心配してくれて、ありがとう」

ところがB氏は、とぼけた顔でこう答えます。
「クリームは塗るのが当たり前だけど、みんつの場合さ、日に焼けているっていうのとは、違うから」
「え、何で?」
「それはね」
そしてB氏は、日本語でこう言いました。
「こげてる」

「こげてる! 何でそんな言葉、知っているの?!」
「ふふふふ、俺は、日本にいたことがあるからな」
「???」
「キャラクターさ」
「あっ!」

B氏の日本語、出典:
【こげる】 by こげぱん(サンエックス社)

2008年6月17日 (火)  村のちょい悪オヤジ?

我が家から小学校(の体育館)までは、真っ直ぐな道1本で、100mもない距離です。

我が家を背にすると、その道は、最初の約1/3がゆったりとした登り坂、その後約2/3が、やはりゆったりとした下り坂となっています。
道の丁度頂点の辺りには、右側に村のゴミ置場、左側に酪農家W氏の家があります。

W氏は、40代後半でしょうか、顔中にもさもさと髭を生やしています。
スイス人としては、幾分小柄ではありますが、酪農家らしい力強そうな体型で、「がっちりしている」と「ずんぐり」の境界線上、といった感じです。

またW氏は、その外観に相応しく――まぁ、この辺の酪農家は皆そうなのですが――良く通る大きな声をしています。
そして、これもこの辺の酪農家には珍しくない事ですが、W氏は大きな犬を飼っていて、これもまたまたこの辺の酪農家には当たり前の事ですが、それを放し飼いにしています。

ちなみにこの犬はオスで、純血かどうかは知りませんが、『Berner Sennenhund(ベルナー センネンフンドゥ)=「ベルン産の牧羊犬」の意』という、日本では『バーニーズ・マウンテン・ドッグ』と呼ばれている種だと思います。  

さてこの犬ですが、簡単な話、私がゴミを捨てに行ったり、バレーボールをしに行ったりすると、自分の家の前、つまり道の左側に大抵いるわけです。
そして、私を見かけると必ず、吠えながら寄って来て、行く手を塞ぐのです。
ぁ、これは決して威嚇ではなく、「撫でろ」と言う事なのです。

多分、飼い主自身やその妻が静かなタイプではありませんし、小学生の娘が確か二人いますので――ひょっとすると、もう少し大きな息子も?――家の中がいつも賑やかな為、犬も賑やかになったのではないか、と思います。
その証拠に、私が立ち止まるとこの犬は、全体重を私にあずけて、寄り掛かって来ます。

実はこの犬、私よりも大きくて、これをやられると私は、地面に座り込むなり、両足で踏ん張るなりして、犬を支えなくてはいけません。
で、こうなるともう犬の思うつぼ、私は、彼を撫でないわけにはいかないのです。

普段は私、何かのついでにここを通るだけですから、この犬を撫でるのも騙し騙しという感じで、ちょこっと撫でては隙をついて去っている、という具合ですから、いつも「一回、犬の方がもう十分と思うぐらい、撫でてやらないと可愛そうかな?」と、思っていました。

そんな先日、「サッカーのスイス・ポルトガル戦を見なくてはいけない」という理由で、バレーボールの練習が、一時間早く切り上げられました。
サッカーに興味のない私が、「ちっ、録画じゃダメなのかよ」と独りごちながら家に向かっていると、まだ外にいたW氏の犬が、私を目掛けて駈け寄って来ます。

「おぉ、犬よ、良いタイミングだ。今日は私、時間がたっぷりあるぞ。君がだらだらになって、もう十分ですって言うまで、撫でてやるからな」
私は、犬を車の邪魔にならない場所まで誘導すると、地面に座り込んで、両手で抱えながら撫で始めました。

犬は、横座りになって私に寄り掛かり、少しでも撫でる手が止まると――抜け毛が多かったので、時々それをまとめるのに、手を止めていたのです――頭で小突いて抗議しつつ、気持ちよさそうに空を眺めていました。

暫くすると、村の男性が私達の側を通り、挨拶のつもりでしょうか、犬が吠えました。
その声を聞いたW氏は、玄関から顔を出し、座り込んで彼の犬を抱えている私を見て、微笑みました。

「みんつ、xx(犬の名前)は抜け毛がすごいだろう? 犬用のブラシ、要るかい?」
「はい、使います!」
「ちょっと待ってな」
そう言うとW氏は、ブラシを取りに家の中に引っ込みました。

「ふふふ、じゃぁ今日は、君をとことんブラッシングして、男前にしてあげよう。これだけ長い毛だと、絡まっている所もあるよな。でも大丈夫。痛くしないから、安心して私に任せなさい」
犬とそんな事を話していると、ブラシを持ったW氏が、再び現われました。

が!!!

先程は、扉の陰に隠れていて気付きませんでしたが、ブラシを手に外に出て来たW氏は、裸足なだけでなく、何と、ズボンを履いていなかったのです!!

……うっ、これが、野性的なファッションなのか?!

2008年6月20日 (金)  なんか、面倒くせぇ〜。(前)

     (文字数制限の関係で、今日の日記は2つに分けました。)

私の畑掘りは、一段落しました。

実際には、掘り出した石はそのままだし、積み上げ始めた石壁も中途半端ですし、移動させる予定の花は、咲き始めてしまったしと、やる事はまだたくさんあるのですが、「今年の分は、まあこんなもんかな」という事で、一旦終りにしました。
野菜は育ち始めていますし、何処かで「良し」にしないと、きりがありませんものね。

それに加え、5月の下旬から天気の悪い日(小雨や霧)が続いていた為、ここ2〜3週間、私が畑に出る回数は、かなり減っていました。

そんな昨日の夕方、久しぶりにからりと晴れた1日でしたので、野菜に水を遣るべきかどうか確かめようと、私は畑に出ました。

地表は乾いていますが、少し掘るとまだ土は幾らか湿っています。
既にある程度大きくなっている野菜は、根も張り出しているので、どうしても必要というわけではないでしょうが、発芽していない種には、地表が湿っていた方が良いでしょう。
かといって、湿り過ぎは種自体を腐らせますから、1日ぐらい水を遣らないというのも、時にはありです。

私の『畑・その一』に水を遣るには――私の畑は、3ヶ所あります。興味のある方は、左のメニュー『暮し』からご覧下さい。――長いホースを引っ張って来なくてはなりませんので、どうせそこまでやるなら、種だけでなく畑全体に、軽く水遣りをしても良いわけです。

ホースを引っ張って来るのが面倒だった私は、畑全体に今日水を遣り、明日の様子をもう一度見るか、今日は思い切って水遣りを止めるか、はたまた、じょうろでちまちまと種だけに水を遣るか決めかね――しかし、じょうろは結局、ホースの元にある水道と畑を何往復もする事になりますから、ホースを使った方が早いわけです。――何となくその辺の雑草を抜いていました。

「あらみんつ、また畑仕事?」
いつもの様に、下の階に住むお婆ちゃんが出て来ます。
「いえ、畑はもう終りなんですけどね、水を撒こうかどうか悩んでいるんですよ」
「今日は、必要ないんじゃない? 私は、鉢植えの花にだけ、水をやるつもりよ」
「そうなんですけどね、種を蒔いてある場所には、水を遣った方が良いかと思って。でも、そうなると、どっちみちホースを引っ張って来るわけだから、畑全体に軽く水撒きをして、明日水を遣らないっていう手もあるな、何て思って、決めかねているんですよ」

そんな話をしていると、お婆ちゃんがホースを引っ張って来て、植木鉢に水をやり始めました。
そう、事はひとりでに解決したのです。
お婆ちゃんが、私の畑のすぐ下で水撒きをしているのですから、終ったらホースをもらえば良いだけですものね。

「お婆ちゃん、そっちが終ったらホース下さい。私も撒く事にしました」
すると、お婆ちゃんが言いました。
「家の横は、気を付けてね。家の壁に水が掛らない様にして、撒いてちょうだい」
「は???」

                 〜後に続く〜

2008年6月20日 (金)  なんか、面倒くせぇ〜。(後)

     (文字数制限の関係で、今日の日記は2つに分けました。)

            〜前からの続き〜

家の横とは、我が家の玄関脇の狭い空間の事ですが、ここには長い間何も植わっていなくて、もしくは、植えても育たなかったのかも知れませんが、猫のトイレになっていました。

その為か、大家(お婆ちゃんの娘です)もお婆ちゃんも、何年間にも渡って私に「あそこは、みんつの花壇だから、何か好きなものを植えなさい」「あそこには、何も植えないの?」「何か植わっていたら、猫は用を足さないと思うのだけど」等と言っていたのです。

今まではあまり気が乗らなかった私ですが、今年は一念発起して、そこを綺麗にすると『セージ』を植えたのです。
そしてそれは、今のところ順調に育っていますから、このまま行けば、猫のトイレ問題は、解決するはずです。

訳が分らないという顔をしている私に、お婆ちゃんが言います。
「家の壁に水が掛ると、室内にカビが湧くのよ」
「え?!」
「ほら、あそこには柵の嵌った穴があるでしょう……」
「ちょっと待って、私、もちろんその穴には、水は撒きませんよ。あの穴が、家の中に続いていることぐらいは、分りますから」

「そうなんだけどね、洗濯機置場の壁には、カビが生えているのよ」
「お婆ちゃんは、外からの水を壁が吸い込んで、室内にカビが出来ると思っているのですね?」
「そうなのよ。でも、家の壁に水が掛らない様にだけ注意してくれれば、大丈夫だから」
「否、それはまずいでしょう。あんな小さな花壇に水を撒いたら、幾ら壁に水が掛らなくても、地面を通して水が行きますよ。ということは、あそこに何か植えたら、駄目なんじゃないですか?」
「それは大丈夫。家の壁にさえ水が掛らなければ良いから」

「あのね、お婆ちゃん、あそこに何かを植えて大きく育ったら、根の周りは常に水分を溜めて置きますよね。外壁が濡れると家の中にカビが湧くとなると、あそこは、常に乾いていないといけない、という事になりますよね。つまり、何も植えない方が良いという事ですよ。壁に水が掛るとかどうとか、そんな話以前の問題でしょう?」
「そうねぇ、でも、それは良いのよ。ただ、壁に水が掛らない様に、気を付けてくれれば」

この理論は、おかしいですよね?
花壇は、家の壁に沿って作られていて、幅が30cmもないのですから、壁に水が直接掛ろうが、気を付けて地面だけが湿る様に水を遣ろうが、壁は濡れますよね?
壁は、もちろん地面の下にも続いているのですから。

外壁が濡れたら室内にカビが湧く……

今まで、雨の日はどうしていたのでしょう? 
この辺は、雪もたくさん積もりますが、それはどうなのでしょう?
水道水が浸透するなら、猫のおしっこは?
私が植えたハーブへの水は、洗濯機置場にカビを作るけど、隣に何年も前からある、お婆ちゃんのハーブへの水は、キッチンの壁にカビを作らないのですよね?
大体、この2〜3週間ずっと天気が悪かったから、私は、全く水遣りなどしていませんでしたが?

……さぁ、皆さんご一緒に。
「♪おし〜えて〜 おじい〜さん〜 おし〜えて〜 おじい〜さん〜 おしえて〜 あるぷすの〜 も〜り〜の〜き〜よ〜♪」

2008年6月23日 (月)  Euro 2008

ここ数日、アルプスも気温が上がり、良い天気になって来ましたので、昨日私達夫婦は、湖へ泳ぎに行きました。

スイカにサンドイッチ、飲み物と本を用意し、張り切って昼前に着いた私達ですが、そこには既に、行列が出来ています。
しかも、その列には、知人カップル(+息子一人)の姿まであります。
皆、考える事は一緒なのですね。

知人カップルと合流した私達は、他の人達の間に布を広げて場所を取り、水に浸かったり寝転んだりと――途中、ふざけて私を溺れかけさせた夫B氏が、私に半分本気で叩かれる、というハプニングこそあったものの――1日中のんびり過ごしていました。

そして、そろそろ日射しも弱くなり、濡れた水着のままでは肌寒くなって来た私達が、「もう帰ろうか?」と話し出した頃です。

急に、私達の周りの空気が変りました。
何がどう違うのか、言葉では表せませんが、何となくざわついた感じというか、それは決して不快なものではありませんでしたが、先程までのただただゆったりした雰囲気から、ほんのちょっぴり凝縮された様な、何かに集中したとでもいう感じになったのです。

きょろきょろと周りを見回すと、その理由が分りました。

「違うよね?」
「でも、似ているよ」
「え、誰?」
「否、こんな所には来ないでしょう」
「やっぱりそうなんじゃない?」
あちこちから、そんな囁き声が聞こえています。

「みんつ、誰か知ってるか?」
普段は鈍いB氏ですら、その空気に気付き、私に聞いてきました。
「多分ね、あの人だと思うんだけど、あの人の名前、私は読めないんだよね。何か変った名前でさ」

「絶対そうよ」
「否、違うだろう。随分と小さいし」
「でも、顔がよく似ているじゃない」
「本物に比べて、下あごが出過ぎじゃないか?」
知人カップルも、そんなことを言っています。

すると、近くにいた若者達の一人が、呑気な声でその人物に話しかけました。
「あのぉ、こんな所で、何やってんすかぁ?」
その人物も、気軽な調子で答えます。
「休暇だよ」

私の住む州は、スイスの中でも特に自然が豊かな場所でして、近隣の外国からは元より、他の地域のスイス人達も休暇に来る所ではありますが、それでもこの湖は、そんなに大きな行楽地というわけではありませんし、この、皆に注目されている人物は、確か、フランス語圏の――私の住む州からは、正反対に位置します――スイス人です。

しかもこの人物、それこそつい2〜3日前ぐらいまではテレビに、否、新聞だのニュースだのを入れるなら、多分今日でさえ、毎日の様に(スイスの)マスコミに取り上げられているのです。

もう、察しの付いた方もいるかと思いますが、そう、私達の目の前、ほんの10mかそこらで、小さな子供に、見事なテクニックで空気ボールを蹴って見せているその人物とは、サッカー『Euro 08』スイス・ナショナル・チームのルドヴィック・マニン(Ludovic Magnin)選手なのです。

暫くして、「じゃ、みんな」と彼が去ると、辺りの空気が再び変りました。
それは、日が暮れ始めた夕方にも相応しい、と言って良い様なものだったでしょうか。
こんな感じの空気です。

……あぁ、スイスは本当に、すっかり負けちゃったのね。



ちなみに、ルドヴィック氏は、こんな人です(↓)。

http://images.google.com/images?q=Ludovic%20Magnin&rls=com.microsoft:ja:IE-SearchBox&ie=UTF-8&oe=UTF-8&sourceid=ie7&rlz=1I7SKPB&um=1&sa=N&tab=wi

(面倒ですが、直リンになってしまいますので、アドレスをコピーしてお使い下さい。)

2008年6月25日 (水)  庭と夕立

一昨日の夕方、私が庭で雑草取りをしていると、ぼたっ、ぼたっと大きな雨粒が落ちて来ました。

それは、如何にも「さぁ、早く家に入りなさい。これから夕立が始まるよ」とでもいう具合の雨粒でしたので、私は急いで道具を片付けると、家に駆け込み、全開にしてあった窓を閉めて周りました。
そして、私が最後の窓を閉め終えた時、タイミング良く雨が降り始めました。

夏の夕立は良いですよね。
畑の水撒きをする手間は省けますし、そこら中に舞っている干し草の屑も洗い流してくれますし――私はアレルギー気味なので、この埃で鼻がだらだら垂れるのです。――何よりもドラマチックです。

ところが、その雨は、降り始めたと同時に終ってしまいました。
雨量は、私の畑がまだらに濡れた程度です。

「あれ、もう終り? こんなちょっとなら、あのまま外にいても良かったかな?」
窓から外を見ると、このまま待っていたらもう少し降るのか、それともこの雲は去ってしまうのか、何とも判断しがたい空模様です。

外が暗くなるまでには、まだ時間がありますので、私は、少し待ってみる事にしました。
もう一回降ってくれたら、畑の水遣りをせずに済むので、ちょっぴり期待しながら。

しかし、1時間以上待っても、一向に外の様子が変りません。
晴れはしないものの、降りもせずという具合です。
このまま待っていたら、夕飯の時間になってしまいますので、私は、意を決して外に出ると、畑全体に十分に水を撒きました。

そして、最後の野菜、春菊に水を撒き終わった直後です。
ゴロゴロゴロと鳴ったかと思うと、再び大粒の雨が落ち始めました。
その様子は、先程よりももっと「夕立が来るぞ」という感じです。

ホースを急いで元に戻し、玄関に飛び込んだ私の後ろで、今度は「ダーッ」と大きな音が。
文字通り、バケツをひっくり返した様な雨です。

「畑に水なんか撒いて、これじゃ私、バカみたいじゃん」

昨日の夕方の事です。

私が一昨日の続き、畑の雑草取りをしていると、またもや前日と同じ様な天気になりました。
「今日は騙されないぞ。降るんだな? そうだな?」

家に入った私は、念の為、新聞の天気欄を見ました。
そこには1週間分の予報が載っていて、月曜日と火曜日は、稲光付きの雨マークです。
「やっぱり夕立か。ふん、今日は水、撒かないぞ」

そんな私の決意が届いたのか、昨日の空は、素直に夕立を降らせました。
「ザーッ」
道路では雨が川を作り、私の畑にも、十分過ぎるほどの水が撒かれました。

その少し後、10分も経たないぐらいの頃です。

雨は入れずに外の空気だけを入れようと、私の部屋は、少しだけ窓が開いていたのですが、PCをしている私の耳に、おかしな音が飛び込んで来ました。
「ジャー、ジョ、ジョ、ジョ、ジョ、ジョー、ジャー」

この音には、聞き覚えがありますが、それは、夕立後には全くそぐわないものです。
私は意識を集中して、その音を再度聞き分け様としましたが、それは、この状況にはどう考えても、おかしなものなのです。

私は、首を傾げつつ、外を見ようと窓辺に行きました。
「げっ!!!」
そう、その音の元は、やはり私の予想通り、ホースから勢い良く流れる水でした。

いえ、いえ、私が水を止め忘れたのではありません。
下の階のお婆ちゃんが、庭に水を撒いているのです。
土もコンクリートも道路も、何もかもそこら中、皆夕立でびしょびしょなのに。

……お婆ちゃん、何故? 何故?? 何故なんだぁー??!!

2008年6月30日 (月)  みんつ、只今充電中。

晴天が続く、「畑日より」の今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?

ってね、実は
下のお婆ちゃんが、毎日毎日うるさくって、ちょっぴり消耗しております。
ホント、これじゃ、姑が二人いる様なものです。

あまり嫌な話ばかり書くのもどうかと思いますので、日記の更新が滞ってはいますが、私自身は至って元気ですので、ご心配なく。

……さて、どうやって、お婆ちゃんを「ぎゃふん」と言わせてやろうかしら?

7月の日記へ