2006年8月3日 (木)
猫、現る。 3
〜前回からの続き〜
茶トラ三兄弟が我が家の庭に現われてから、一週間も経たない頃、私達の関係が変る出来事が起こりました。
それは、…… 夫B氏の昼食用に買ったチキンが、不味かったのです。
はい、簡単な話ですね。 殆ど食べていないチキンを捨ててしまうのは、惜しいと感じたB氏、それを家に持ち帰り、庭の垣根の中に住んでいる三男に与えたのです。
この突如のご馳走に三男は、盗むようにチキン半分を咥え、藪の中に戻ると、骨まで残さずにガツガツと平らげました。 「やっぱり野良だねぇ。食べられる時に食べておこうって感じだね」 その場に居合わせた、下の階のお婆ちゃんも、その様子を見て言います。
この日以来三男は、我が家の庭にいれば、攻撃されないだけでなく、たまには餌ももらえると考えたようで、私が庭に出ると、距離を置いてではありますが、近寄って来るようになりました。 そしてこの距離は、日に日に縮まり、ついに私は、こう言わざるをえなくなりました。 「B氏、この次買い物に行ったら、緊急用のキャット・フードを二缶ぐらい買って来て。もしも、三男が弱りだしたら、すぐに餌をやれるように」
この時点でもまだ私は、三男を飼うかどうか、決めかねていました。 というのも、今の部屋に一生住むつもりはありませんので、私達はいずれ、引っ越しをしなくてはいけないからです。
そんな私に、B氏は言います。 「新しく仔猫をもらって来るのは、引っ越しを考えると気が進まないけど、この猫はもうここにいるんだし、例え引っ越さなくてはいけないとしても、こいつの生活が今よりも悪くなる事は、ないと思うぞ」
自力で餌が取れずにみすぼらしくなるよりも、私に飼われて引っ越しをした方が、確かにこの三男の場合、我が家の垣根から他所に行かないわけですし、良い生活になるのかも知れません。 そんな風に考えている内に、B氏が買って来た緊急用の餌は、簡単になくなりました。 ……いやぁ、やっぱり餌があると、ついついやってしまいますよね。
警戒しつつではありますが、三男も私の姿を見かけると、すり寄って来る様になり、いつの間にか、我が家にはお徳用キャット・フードの袋が置かれました。
長男と次男については、幸運なことに、問題はひとりでに解決しました。 雄なので行動範囲が広いのでしょう、我が家にはたまに顔を出すぐらいで、私が飼う必要はなさそうなのです。
さて、そんな風にして我が家に入り込んだ三男は、その風貌からM氏と名付けられ、ゆっくりとではありますが、私達夫婦に馴染み始めています。 まだ、垣根の中で過ごす時間の方が多いのですが、まあ、冬になって寒くなれば、自然に家の中に入って来るでしょう。
ということで、我が家にまた、仲間が増えました。
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と、終わる予定でしたが、
M氏が出入りし始めてから、下の階に住むC氏だの他所の猫だのまでが、急に我が家に現われるようになりました。 今まで見たこともない猫が、いきなり家の中にいるのです。
私は猫好きですが、近所中の猫全部に餌をやるほど、太っ腹ではありません。 ですから、M氏以外の猫は当然追い払うのですが、これか今朝、M氏の食事中に起こりました。 そして、それを見たM氏、私を再び警戒してしまったようで、慌てて逃げ出しました。
やれやれ、もう一回、初めからやり直しのようです。
……果たしてM氏は、本当に我が家の仲間になれるのでしょうか? |
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