2009年8月7日 (金)  この講座、ありえない。

現在我が夫B氏は、居間を占領して仕事をしているのですが、テレビかラジオをつけながらしているようで、部屋の前を通ると、ドア越しに人の声が聞こえてきます。

「仕事中は部屋に入るべからず」ということでもありませんので、私は時々居間に入ってはいたのですが、特に興味もありませんでしたから、「あぁ、何か聞いているんだな」ぐらいで、気にも留めずにいました。

ところが一昨日、やはり何気なく居間に入った私の耳に、聞き慣れた言葉が飛び込んできました。
「こちらのジャケットは如何ですか?」
「このサングラスも掛けてみて下さい」
「良くお似合いですよ。俳優さんかと間違えるぐらいです」
そうです、なんとB氏は、iPodで日本語講座を聴いているのです。

我が家では、「お互いに相手の言語を習って欲しい」というような話はありませんので、私自身は、スイスに住んでいる以上必要に迫られていますから、ドイツ語を習いましたが、B氏の日本語に関しては「やりたきゃやったら良いし、面倒なら習わなくても良いし、どっちでも良いよぉ〜」と答えていたのです。

しかし、本人がその気であるならば、私だって応援はします。
「へぇ、やるじゃん。少しは、日本語を習おうって思ってるんだ」
「何言ってるか分らないけど、こうやってまめに聞いていれば、その内分ってくるかと思ってさ」
「まぁね、普段使わない言語を修得するのは大変だからね。そうやって楽しめる範囲で、ちょっとずつ覚えれば良いんじゃない」

そんな話をしていると、背後のスピーカーから、信じられない台詞が発せられました。
「えっ?! ちょっと待って。今のところ、もう一回聞ける?」
「巻き戻し?」
「うん、今の会話、もう一回聞かせて」

B氏が聞いていたのは、iPodにダウンロードした、れっきとした日本語講座です。
日本人の男女1人ずつが、日本語のテキストに沿って会話をし、その内容を日本語も話せるアメリカ人の男性が英語で説明し……という、外国人向けのよくある構成のものです。

3人の会話や声の雰囲気から、番組の進行役はアメリカ人のようです。
日本人の男女は、まだ20代ではないかという感じですが、二人共、ひょっとしたら何処かで訓練を受けたのかも知れないと思えるような、アナウンサーのような綺麗な発音で話していました。

良いですよね?
普通なら、そう思いますよね。

が、しかし、もう一度会話を聞いた私は、こう言わざるを得ませんでした。
「B氏、折角だけど、この番組は駄目だよ。こんな日本語を習ったら、絶対まずい。少なくとも私の世代は、これは認めないよ」

というのも、番組のテキストは、こんな風になっていたのです。

女性店員(日本人):「こちらのジャケットは、如何ですか?」
客の男性(日本人)がジャケットを試着。
女性店員(日本人):「このサングラスも掛けてみて下さい」
客の男性(日本人)がサングラスを掛ける。
男性店員(アメリカ人):「良くお似合いですよ。俳優かと間違えるぐらいです」

ここで、客の日本人が一言。
「マジっすかぁ?!」

……「マジっすかぁ?」なんてB氏に言われた日にゃぁ、私の方が、マジでむかつく。

2009年8月13日 (木)  スイス○○

現在私は、毎日のように野菜を収穫しては、冬への保存用にと加工しているのですが、畑から採って来た野菜を洗いながら、先日ふと思うことがありました。

その時私が洗っていたのは、『スイスチャード』という葉野菜なのですが、この名前、多分スイス人は、誰も知らないと思うのです。
かくいう私もつい最近になって、この野菜が何なのかを知ったわけです。

ということで今日は、『スイス○○』と呼ばれているにも拘わらず、実際はスイスにないものを幾つか上げてみようと思います。

【スイスチャード】

実はこの野菜、スイスでも特に私が住む地方で有名でして、これを使った地元料理があるぐらいなのです(レシピは、近日アップ予定です)。
ところがこれ、スイスでは『マンゴールド(Mangold)』と呼ばれています。

「スイスチャード下さい」
……スイスのスーパーでは、買えないかも知れませんね。

こんな野菜です。(↓)


【スイスチーズ】

これは私 よく翻訳ものの小説で目にするのです。
例えば、「ハムとスイスチーズをパンに挟んで」なんて感じで書いてあります。

スイスのスーパーに行くと、どこでもずら〜っとチーズが並んでいて、色々な名前のチーズがありますが、そこには『スイスチーズ』という名のチーズは、ありません。

……そういった本を読む度に私、一体何のチーズが挟まっているのか、気になって気になって。

【スイス銀行】

小説や映画にしばしば出てくるこの銀行に口座を持つことは、お金持ちの象徴とでもいう感じですよね。
私自身、スイスに来た当初は「ふふふ、口座を開くならスイス銀行にしよう」なんて思っていましたから。

「報酬はスイス銀行の口座に振り込んでくれ」
眉毛の太いかのスナイパー氏はそう言っているようですが、スイスに住んでいる私から、ここで皆さんにある秘密をお教えします。

このスナイパー氏が、仕事を引退して、「今まで貯めたお金で優雅に老後を過ごそう」と思ったとしても、彼は1円も手に入れることは出来ません。

何故なら、スイスには『スイス銀行』という銀行は、存在しないからです。
チーズ同様、スイスには色んな名前の銀行がありますが、『スイス銀行』という名前の銀行は、ありません。

ですから、あのスナイパー氏が例えばスイスにやって来て、お金を引き出そうと思った時、彼は愕然とするに違いありません。
「俺の口座は、どの銀行にあるんだ?!」と。

……彼の仕事の依頼主は、ひょっとして丸儲け?

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